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 ロイドが料理をする話。今回はトマトソーススパゲティを作ってランディと食べます。
4章の時の何作るかの選択肢で、私の中では勝手に、エリィ:カルボナーラ、ティオ:ボンゴレ、ランディ:ナストマトが好みということになってます。ます!



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 支援要請のお礼にと貰った、採れたてのトマトとナス。公僕の身だ、本来は供応を辞退するべきだが、祖父のような年齢の依頼人の純粋な好意を無碍にはできず、結局、袋いっぱいに野菜を持たされた。
(絶対、美味しいよな)
袋からぴょこりとはみ出した、濃い紫の蔕に、ロイドは微笑む。太陽の光と、育てた人間の愛情をたっぷり注がれた野菜達は、少しだけ傷があったり、愛嬌のある形をしているものもあったが、どれも鮮やかな色と見事な艶を持っていた。市場で買えばそれなりの値段がするだろう。寄せてもらった感謝の気持ちは勿論のこと、食費が浮くのもありがたい。
 (さて、何を作ろうか)
今日はロイドが食事当番の日だ。幼い頃に両親を亡くしたせいで、必要に迫られて家事をやっていたおかげで、家事は一通りこなせる。加えて、兄が死んでから預けられた叔父の家では、料理好きな叔母に暇潰しがてら色々と仕込まれたため、そこそこのレパートリーを、そこそこの味で作れる自信はあった。だが、「得意」が「好き」になったのは、支援課に来てからだ。
 おいしい、と口々に褒め称え、奪い合う勢いでロイドの作ったものを食べてくれる仲間達。嬉しくて、もっと喜んで欲しくて、工夫を重ねているうちに、ロイドは料理が好きになっていた。支援課はなかなかに忙しいため、あまり手の込んだものは作れないが、ちょっとした下ごしらえやひと手間を掛けるだけで、料理はぐんと美味しくなる。そして、結果は目に見える評価になって、ロイドに返って来る。美味しければ笑顔で、いまいちならば苦笑いで。皆のとびきりの笑顔が欲しいから、ロイドは今日も腕を振るう。
 帰り道に立ち寄ったマーケットで、夕食用に鳥肉を買い込む。五人分ともなるとかなりの量だ。今日は表面をカリカリに焼いた鳥肉のソテーに、貰ったトマトとナスをたっぷりと使ったラタトゥイユに決めた。
ついでに、安売りされていたベーコンを少し多めに買う。時刻は昼下がりで、ロイドはまだ昼食を食べていない。他のメンバーはまだ仕事中で、一人だけのランチになるはずだから、麺類で手軽に済ませるつもりだ。ここでもナスとトマトが役に立つ。
(昼はスパゲッティでいいよな。パスタはこの間、乾麺をまとめ買いしたのがあるし。ちょっと寂しいしから、スープかサラダも付けようか。確か買い置きの、粉末のオニオンコンソメスープが残ってたはず…)
 主婦のようなことを考えながらホームに着くと、玄関の鍵が開いていた。どうやら、自分以外に帰ってきた者がいるらしい。ただいま、と声を掛けて身を滑り込ませると、おかえり、と落ち着いた声が返ってきた。
「お前も早かったんだな。おつかれ」
今戻ったところだったのか、台所から頭を覗かせたランディは、まだ上着も脱いでいなかった。彼はロイドが手に持った袋に気付くと、へにゃりと相好を崩す。元々の造作が整っているせいか、どんな表情でも格好よく見えてしまうのが癪だ。尤も、惚れた弱みもあるだろうが。
 「ロイド。もしかして、昼メシまだ?」
「あ、うん。ランディも?」
「おう。という訳で、ご相伴にあずからせていただきたいのですが」
だってお前のメシ美味いし、なんて付け加えられたら、ノーとは言えない。ロイドは形ばかりの溜息を吐いて見せてから、頷いた。
「いいよ。その代わり、ちゃんと手伝ってくれよな」
「勿論。何作ってくれるんだ?」
 子供のように期待に満ちた眼差しを向けられ、ロイドは女神に感謝した。だってナスとトマトのスパゲティは、ランディの好物なのだから。
 
 程無くして出来上がったのは、ナスとベーコンがたっぷり入ったトマトスパゲティ。張り切って、スープにミモザサラダまで付けてしまった。
 油通しをしたナスは目にも美しい紫で、煮込んでも殆ど型崩れしせず、ほっくりとしていた。トマトもびっくりするほど甘みがある。一口含んだランディは軽く目を見張った後、顔を輝かせて「美味い!」と言ってくれた。最高の賛辞だ。
 余さず食べてくれたランディは、片付けだけでなく、食後のコーヒーまでサービスしてくれた。満ち足りた気持ちで味わっていると、ランディが不意に「…足りねぇな」と呟く。
「? 量、少なかったか?」
支援要請は体を使うものが殆どであるため、平均的な成人よりも必要なエネルギーは多い。それをふまえて大盛りにしたのだが、物足りなかったのだろうか。腹の足しになりそうな食べ物が残っているか確認しようと席を立ったロイドの腕を、しかしランディが掴んだ。彼はぞくりとするほどの色香を放っていた。
 「ラン、ディ」
彼の空気が意味するものが分からないほど、自分は子供ではない。だが、何が彼のスイッチを押したのかは気にかかる。彼は悪戯っぽく口の端を吊り上げると、情事の時にしか使わない、肉欲を孕んだ低い声で囁いた。
「腹はいっぱいになったんだけどさ。代わりに、別のモンが欲しくなっちまった」
視線で是を問われ、ロイドは首をちいさく縦に振った。ランディは腰を上げると、ロイドの手を引いて歩き出す。どうやら残り少ない午後は、ベッドの上で過ごすことに決まったようだった。




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