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※以前期間限定で公開していたものの再アップです。
すみませんが下巻分を書けなかったので、こんな話になるはずだったよ!っていうのをあげておきます><
長すぎて制限に引っかかったので、2つに分けます。②はこちら

・ねためもです 小説ではないです プロットと下書きの中間くらいの荒さです…
・過去捏造、オリジナル設定満載です
・コミックス8巻あたりの設定で考えてた話なので、現在出ている公式の過去情報とは完全に違ってしまっていますが、パラレル的な感じでふんわりと読んでいただければと!

上記OKな方だけどうぞ↓









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・6章 シン18歳、ジャ14歳
 
パルテピアの悲劇。ドラコが仲間に。イムチャックに数か月身を寄せる。イムチャック王の懐の深さにひかれた。
ヒナ、黒幕探りを国王に命じられ、シンとドラコとジャも同行。情報が集まりやすいバルバッドへ。
王に謁見し、協力をこう。代わりに海賊胎児を手伝うことに。※命を助けた系出会い
で、黒の組織は金属器を集めている。最近、レーム南端に迷宮一個できた。奴らにとられるくらいなら、俺らの誰かが ということで、行く。
※パルテピアで金属器使いが敵側にいたということで。
ここまでで半年月くらい。さらっと回想の形で書く。
 
 三人だけでレーム領へ入り、最南端へと向かった。闘技場がある大きな町。この町から少し離れた場所に迷宮がある。
 町は人で溢れてる。道行く人に尋ねると、トーナメントが近いとのころだった。お兄さん方、立派な剣持ってるね!まだエントリーできるから参加してみれば?
★ここで剣闘士の説明。基本、戦うのは剣奴。彼らは奴隷だったり、罪人だったり。まれに趣味でやってる奴もいるけど。奴隷は奴隷だけど、育てるのにも時間と金がかかるし、わりと尊敬を集める職業。栄誉を勝ち取れば解放もされるし、軍に徴集されることも。
 ちらしもらう。おお、すごい金額だな。皆でちらしを眺めて言う。闘技場かぁ。腕試しかぁ。たのしいかもしれない。ジャーファル、金のところをみてマジ顔。
「これだけあれば、当面の食費が…」
財布担当はジャーファル。食べざかりの男が四人、しかもうち二人はかなりの酒のみ(シンとヒナ。ドラコの飲めるが、遠慮してあまり飲まない)。調査費として補助は出てるけど、減りが早い自覚はある。護衛などの任務をして稼ぎながら旅を続けてるけど、豊かではないので苦労させてる。みんなでごめんね!て。
 とりあえず先に宿だなって宿探して歩いてると、なんだか道がすく。ドラコーンが申し訳なさそうにあやまる。彼はシンと同じ年、もともと人間だったが、パルテピアで魔法に寄って体を変えられてしまった。もう戻れない。長袖、顔には布を被ってなるべく露出を少なくはしているけど、怖がられてしまう。
 ジャ、遠巻きにしている奴らを一瞥すると、ドラコの荷物持ってない手を握る。いこ、って。子供がそうしたからから、周りの目がちょっとゆるんだ。
 シンがそうしていたからか、彼は人に触れるのも、触れられるのもあまり怖がらなくなった。でも、親しい人間以外には許さない。つまり、ドラコのことは気に行ってる証拠。それにあれは、絶対周りの反応を分かっててやってる。ドラコのために。
 ジャは十四歳。発育あんまりよくないから幼く見える。いつも、シンやヒナホホみたいにでかくなりたいって言ってるけど、己の生かし方をよく分かっている。幼い外見の子供が無邪気に慕う大人が悪い人間だとは思われない効果。すえ恐ろしい。ふっきれたというか、手段は選ばないというか、思い切りがいい。
(ほんと、将来が楽しみだよ…)
結局、実家には一年ほどいたが、家を出る時、両親にくれぐれもジャーファルを手放すなよ!と釘を刺されるくらい、彼は使える子になった。たった一年、されど一年。この小さな体の中で、芽が着実に芽吹きつつある。まだまだ不安定だけど、きっといつか見事な花を咲かせるだろう。それまで見守りたい。
「お、ジャーファル、ちょっと」
どこからか飛んできた花弁がジャのかみにくっついている。とってやると、ジャ、ありがとうございますって。すごくかわいく笑った。どきり、とした。
(まいったね…)
徐々に丸みの取れてきた体。喉仏だってある。ナニもついてる。でもやっぱり、かわいいって思ってしまう。そのへんの女よりも。
 もう肉欲とは混同しないけど、自分は相変わらず、ジャーファルがかわいい。特別。そして最近困ったことに、ジャーファルがかつての自分と同じ状況――シンをつがいの相手として見てる系――になっているように思える。本人は気付いていないみたいだけど。
 いやだとかは思わない。ただ、不安なだけ。この子は自分しかいないから。愛情も真愛も全部ひっくるめてシンにむいてるから、勘違いしちゃっただけ。思春期には同性同士であやまった方向にいきやすいって聞くから、自分がきをつけて、矯正してあげないといけない。ちゃんといとしい女をみつけて、幸せになれるように。
(あれ?)
 ちくり。むねがいたむ。いとしいひとをみつけたら、ジャはどこかへいってしまう?自分がジャのいちばんではなくなっちゃう?それはいやだ。でも、覚悟しないと。
 自分達の関係は何なのだろう。他の仲間とは違う。親子、と呼ぶには近すぎて、兄弟にしては隔たりがある。一番近しい他人との関係は――恋人?わからなくなった。とにかくジャーファルには幸せになってほしいから、自分の傍にいることでジャーファルがしあわせなら、難しく考えなくてもいいかって。まあ、別離の日はきっとまだ先。今は目先の迷宮攻略に集中せねば。
 考えてたらちょっと歩調が遅れた。宿みつけたらしく仲間達が呼んでる。慌てて走ったシン、通行人に肩をぶつけてしまう。あ、すみません。いえいえこちらこそ。
 不思議な服をまとった、不思議なふんいきの、女性。彼女はシンをみて微笑む。あなた、不思議な力を持ってるわね。え?
「シン!」
呼ばれて注意が向く。ちょっと視線を逸らした隙に、女は消えていた。
 
 何件も宿を回ってようやく見つけた空き部屋は、色町に近い、あまり子供にはよくなさそうなところ。気にするジャじゃないけど。あんまひろくないし、綺麗じゃないし、の割に高い。まあ、祭り前だから取れただけましか。
 荷物を置いて情報収集開始。ヒナとドラコは迷宮の現場を見に、シンとジャは町で聞き込み。いい時間になったので、待ち合わせ場所の酒場に入って二人を待つ。下記の情報を入手。
・迷宮の入口は領主の私兵によって封鎖されてる 表向きは余計な死人を出さないようにだけど、要は勝手に攻略されてお宝を奪われないため
・闘技場の経営者は領主、けど、町のわるいやつらを手を組んでるらしく、色々きたないことやってるらしい。借金返せないやつらは闘技場で獣の餌コース(いい話は聞かない)→この町も腐ってるな!
・今年のトーナメントはもりあがりそう なんたって今あの闘技場で一番強い剣奴はまだこどもなんだから(ファナリス)
シン、ジャを見る。ジャーファル、興味なさそう。船の中で剣闘士や闘技場について説明したけど、軽蔑も憤りもしなかった。そういうもんなんでしょ、って。頼もしくもあるが、心配でもある。自分がきにしすぎなのかな?だってジャも奴隷のようだったから、同じ境遇のものが見世物として働かされてるのは複雑じゃないのかな。
 そう聞いてみたら、ジャーファルは、そりゃあちょっとは、って言った。けど、私はシンに拾われましたからね。憐れんだところでなんにもできませんし。うーん冷めてんな。自分よりこの子の方がよっぽど割り切ってる。むにゃむにゃしてると、ジャ、笑って、
「私はシンほどやさしくないから。それに、私が憐れんだところで何ができるわけでもない」
「や、それはおれもおなじだけど」
「あんたはそのままでいいですよ」
年上みたいに笑う。どっちが兄だかわかりゃしない!
 うれしいようなかなしいようなで酒飲んでると、ヒナとドラコが合流。
「迷宮、どうだった?」
「そこそこ厳重。けど、突破できなくもない」
「うーん、どうしようか。いっそ領主に直接、頼んでみるか?」
いやそれむりだろう。とられたくないから封鎖してるんだし。じゃあやっぱりむりやりしかないよなぁ。
 もうちょっと考えよう、となり、とりあえず今日は食べて飲んで。店を出た後、色町をみて、シン、むらぁときたのでちょっと行って来るね!て。ヒナドラ、気を着けてけよ、財布すられるなよて。ヒナは妻に操をたて、ドラコは同い年なのに潔癖なので、色町いかない。
 シン、ちょっと思い立って、ジャーファルにも行く?って。お前、もう十四だし。そういうこと知っててもいいかなって。ジャ、ちょっと傷付いたような顔でいかない!先かえる!て走り去ってしまう。
 残されたシンに、ドラコとヒナ、びみょうなかお。あの年齢は難しいぞって。シン、でも、ジャーファルはそういうこと興味なさすぎだし。俺でいっぱいだからさ、もうちょっと他にも目を。男なんだから。ドラコ、男ではなく、じゃーふぁるだろ。人それぞれ、ゆっくりみてやれ、て言われ、ほんとに同い年かその落ち付き…!てなる。
 シン、まあ、情報収集でもあるから、ちょっと行って来る。ジャーファルのことたのんだぞ、て、夜の町へ。
 適当な酒場を選んで入って、酒を飲んで、声をかけてきた女の飲み、そして一晩を楽しみ。
 
 硬い。冷たい。痛い。
 昨日一夜を共にした女性はやわらかかった。うつくしいし、ちょっときつかったけど、まあ上玉。ベッドもまぁまぁだった。すくなくともこんな石床みたいな感触ではなかったはず。
「起きろ!」
「ん…」
じゃーふぁるもうちょっとねかせて。なんて言ってると、微妙な殺気。慌てて飛び起きる。と、そこは小汚くて薄暗い部屋だった。安宿ではない。
「へ?」
きょろきょろするシンを見下し、いかにも奴隷使いといった風な男は馬鹿にしたような口調で言う。
「ようやくお目ざめか。とっとと起きろ、仕事だ」
へ、ちょっと待って、なんでおれここに?!全然覚えてないんだけど! 食い下がると、男、蔑視する。
「しらねぇよ。俺が知ってるのは、お前が売られたってことくらいだ。何したのかは知らないけどな。ま、見た所丈夫そうだし、借金返せば出られるんだ。せいぜい真面目に働け」
売られた。慌てて体を見回すと、足には枷。腰にあった剣も、荷物袋も、財布もない。みぐるみはがれている。はっとする。金属器!ヴァレフォールの腕輪ない!!おそるおそる耳に手あてると、バアルはあった。ちょっとほっとした。
よく分からないまま追い立てられ、他の十人近くいる男達と一緒に部屋の外に出される。みんな痩せて、つかれて、ぼろぼろだった。みんなも足には枷。
 顔を洗いたいとか、腹が減ったとか言える雰囲気ではない。とりあえずついてゆくと、前を行く中年の男が声掛けてきた。
「おい、新入り。始めに言っておくが、手を抜こうとするんじゃないぞ。連帯責任で俺らまで罰せられるんだからな」
「すまないが、全然事情が呑み込めないんだ。っていうか、借金した記憶すらないのに身ぐるみはがれてこんなとこに」
男、同情の目。それがほんとなら、災難だったな。まあ、命があるだけましだと思え。働けば、そのうち出られる。借金の額にもよるがな。
働くって、ここはどこ? 闘技場だよ。
 視界が開ける。まぶしい。そこはコロシアムだった。足を踏み入れるのははじめて。円形。ひろい、でかい。
 日の高さからまだ朝であるのが分かる。客はまだいない。けど、競技場には何体もの猛獣の死骸があった。血の臭いすごい。あと、人間の死体もいっこだけ。
「とっとと片せ」
せっつかれ、麻袋を渡される。どうやらこれに肉をつめろということらしい。気分のいいものではないが、とりあえず今生きるためには必要。
 そして単純作業なので、現状を整理。自分はどうやら、あの女に騙されて身ぐるみはがれて売られたらしい。幸い、財布の大本はジャーファル。重要な書類もあっちがもってる。連絡さえとれればなんとかしてもらえる…かも。しかしめっちゃ怒られるだろう。こわい。口利いてくれなくなるかもしれない。
 重い気持ちで黙々と作業をしていると、自分達が入って来たのと反対側の奥から悲鳴。でかいライオン。すごい牙。見たことある、暗黒大陸の生き物。毒をもってる。
 皆、逃げ出す。しかし奴隷使い達は扉を閉ざしてしまった。閉めだされるシン達。シン、落ちてた剣を拾う。よかった、模擬じゃなく刃がある。
 いざとなればバアルの力を使うつもりで戦い、なんとか勝つ。獣が倒れたら、皆出てきた。何すんだ!高いんだぞ!そっちかよ!!
 借金増やされるのか、それとももしかして殺されるのかな、そうなったらもうなりふりかまわずバアルで逃げようと思ってると、奴隷つかい、上から下までシンを見降ろし、頷く。
「お前、剣習ってるな。いくつからだ」
一応すなおにこたえておく。
「六つから」
「誰にならった」
「どこかの軍にいたっていう人から。でも、真面目じゃなかったら、殆ど自己流だよ」
「これまで何してた」
「冒険者ってやつ? 隊商の護衛とかしながら、世界を旅して回ってる。まあ、悪い女に騙されたみたいでこんなとこにいるけどな!」
男、にやりと笑い。お前、剣闘士にならないか、て。ええええ。
 
 
 
 
 
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・7章
 
剣闘士・シンドバッドでびゅー。
自分を剣闘士に推薦したあの男は、今は闘技場で下働きをしているが、かつては自身も剣闘士であり、多少の顔が利くという。もうそろそろ大会だが、今年は剣闘士の怪我が多く、数が足りない。どうしようか悩んでいたところにシンをみつけ、またここの主(領主)に売り飛ばした。
 領主の側には愛人であの女がいた。あっ!女、にやにや。余計なことは言わない方がみのためよ、って、領主にからみついて。そういうことか。
 女の指にはヴァレフォールの腕輪。しかし言えず。領主は首を撥ねることできるのだから。
 とにかく、シンノ今の身分は剣奴。借金の額を確認したが、全然見に覚えがない。とても手持ちでは払えないが、実家から送金してもらえばなんとかなる、ジャの荷物にはバルバット王達の書面も。使えばなんとかなるだろうけど、あとあと面倒そうだし、なさけなさすぎる。
 とりあえず、優勝できれば返せる。たんかをきって執務室を出る。今日は午後から訓練だ。腕には自信があるけど、ルールとかなんにもわからないから、おしえてもらわないといけない。ただの奴隷とは違い、剣奴は莫大な金を産み出す財産。その分大切にされる。自分にも教官がついた。部屋も四人部屋だがちゃんと寝台あるし、食事もでる。恐らく、目覚めた時の雑魚部屋にくらべたらはるかにましな待遇。
 競技場へ向かう途中、廊下の手すりに座りぼんやりしている、鮮やかな赤い髪の少年と出会う(マス)。年は出会った頃のジャと同じくらいに見える。こんなところに子供? 足に鎖、奴隷か。
 でも、下働きには見えない。鍛えたからだ。まさか剣闘士?けものみたい。
 やあ! むしされる。俺、シンドバッド。今日から剣闘士になった。よろしく。君は?無視される。逃げられる。やっぱり獣みたいだった。
 
 それから怒涛の訓練。毎日へろへろ。しかも監視がきびしく、外に連絡が取れない。ジャ達は心配してるだろう。焦るけど、どうしようもない。とりあえず生きていればなんとかなる。
 訓練途中で剣闘士達の大会の予選があり、恐らく剣闘士としては最速であろう一週間程度でシンはデビュー戦。とりあえず本戦まで残れた。それなりに人気が出たらしく、差し入れとかいっぱいもらった。個室になった。
 戦って勝てば賞金出る。けど、あの額じゃあ焼け石に水。やっぱ優勝狙うしかない。シン、色々調査。戦いを見るなり、自分の相手になりそうなのは、三人。一人は熟練の槍使い。リーチが長い分やりにくい。一人は剣。まだ若いけど秘蔵ッ子らしく、いい達筋。体力もある。三人目は、マス。ファナリスだという。一応剣を使うが、剣自体はいまいちだけど、とにかく身体能力がべらぼう。
(組み合わせ次第だな…上手く潰し会ってくれるといいけど)
 
 本戦開始を明日に控えた晩、最後に教官のありがたいお言葉を受けて訓練場を出る。窓の外には月。
もう観客のいなくなったコロシアムへ続く回廊に、マスはいた。ぼんやり月を見ていた。
「よぉ」
レームノ言葉で挨拶する。しょうこりもなく話し続けたら、返事くらいはしてくれるようになった。マス、珍しK自分から話す。
「あんた、ふつうじゃない臭いがする。なんで、こんなとこいるの」
におい、ねぇ。さすがファナリス。シン、冒険の一環さ。迷宮攻略しに。て。
マス、迷宮?旅?たのしいの? たのしいさ。お前はみたくないか? まだみぬものをしるのが。
マス、わからないって。だって、知らないからって。シン、ちょっとまじめになって。君はどうしてここへ? さあ。記憶にない。気が付いたら、ここに売られてた。
(奴隷か)
※要確認 マスの足に奴隷のくさりある?あれば描写を!
シン、笑って。分からないなら、教えてあげる。世界がどんなに楽しいか。
とっておきの冒険の話をひとつ。ジャーファルが一番好きだっていってたやつ。マス、あまり表情動かないけど、最後まできいてた。
「ほんと? 人が竜になるなんて」魔装のこと
「ほんとなんだよ。なんなら証拠を見せてもいい」
バアルならある。マス、でもいいやって。どうせあんたもいなくなるからって。諦めきったその態度が誰かさんとにていて、切なくなり。気が付けば、腕を掴んでいた。
「なに」
「いなくならないよ。っていうか、一緒に行こう!外、みたくないのか」
「わかんない。おれは、どれいだから。あんたみたいに、自由にはなれない」
 シン、無力感にさいなまれる。たとえばこの鎖をきったところで、この子は自由にはなれない。見せない枷がつきっぱなし。権力、暴力、恐怖。ジャーファルを、マスルールを縛る見えないくさり。解き放つには、どうしたらいいのか。分からない。一個人の、自分の力ではだめなのか。いくらジンを従えてたって、こんなにも無力。
 マス、去る。背中をみつめ、無力感に苛まれながらシン、思う。根本をかえなきゃだめだ。全てをひっくりかえすような力がないと。それこそ、王様みたいな。
 ここで立ち尽くしても何の解決にもならない。シン、部屋に戻ろうと歩き出した。その時、僅かだが気配の揺れを感じた。振り返らずに言う。
「つき辺りの棟、三階の右奥から二番目の部屋」
呟く。気配が消える。極力何事もないふりをして部屋に戻ると、ぎんいろがいた。後ろ手に施錠し、シン、腕を広げ「ジャーファ」鉄槌がきた。
「うごっ」
「ばかですかあんたは!なんでこんなとこで剣闘士なんてやってるんですか?!」
手短にかくかくしかじか。
 ジャ、頭抑え、また女ですか。あんたをどれだけ探し回ったか分かってます? シンて名前の剣闘士がいるって噂を聞いた時の私達のきもちかんがえてんですかあんたね!わーんごめん。一歩間違えば死んじゃうんですよ?!
 ジャ、顔色あんまりよくない。きっと毎晩さがしてくれた。流石に申し訳なくなり、頭を下げる。ごめん! いくら年上でも、偉くても、王様になっても、自分に非があるなら謝れる人間でありたい。ジャ、くちごもり、仕方ないって。腕伸ばして、抱き締める。あったかい。ほっとした。
「シン。ちょっとくさい」「仕方ないだろ、風呂入れないんだから。水浴びはしてるぞ」
自分が十八になったから、ジャは十四。よく考えたら、それくらいの男同士は抱き合ったりしない。けど、シンはいつだって、ジャーファルに触れたいと思ってしまう。やっぱおかしいのかな。でもがまんできない。くさい言いながらも、さびしかったんだって言ったら逃げないジャを膝に載せ、状況説明。金属器取られたっていったら、ゴミを見るような目で見られた。
「とにかく、あんたは優勝しろ。金を稼げ。でも、いざとなったら逃げろよ」
ジャーファルくん口調戻ってる戻ってる。頷き、シン、言う。なあジャーファル、優勝したらそれは豪華なパレードがあるらしいぞ。はあ。その間、迷宮の警備は手薄になるんじゃないのかな。…なるほど。用意はしますが、勝算は?それなりに。
 ジャ、明日からは見に行きます、って去ってゆく。ごめんな。主の尻ぬぐいも従者の務めですから、ってジャ、ちょっと表情をやわらげて、しんぱい、したんですよ、て。ぐわんときた。かわいい。思わず腕を伸ばし掛けた。その先はどうなるかしらないけど。けど、ジャ、するりと交わして窓からさってゆく。
 シンベッドに座り、さっきまでジャがいたとこのぬくもりをなでた。よみがえるいつぞやの夜の記憶。ふりはらい、変な気にならないうちに、寝ようとした。と、ノック。
「はい」
あの女。何の用だ。あら、随分な態度ね。私の言葉一つでなんとでもなるのに?
 シンから盗んだ腕輪の付いた指で撫でられる。これ返して欲しければ満足させて、と言われるが、シン、首を横に振る。人のものには手を出さない主義なんだ。で、貴婦人にするようなキス。あんたのしたことは許せないけど、腕輪は預けておく。それ、ほんとに大事なもんだから、大切にして。
 女、ぽかん、て。やだなんて女ったらし!爆笑。ちょ、声でかい。あんたボスの愛人なんだろ、見られたらどうすんだよ。いいわよべつに。みんな知ってる。
 女、腕輪を自分の手首から抜き取って、シンに放り投げる。かえしてあげる。その方があんた、気にしそうだから。またくるわ、て女、去る。シン、色々あり過ぎる!て唸りながら今度こそ眠った。
 
 
 
 
 本戦。わりといい感じに勝ち進む。お嬢さん方からは応援されるし、悪い気分じゃない。
 大会は三日間に分けて行われる。基本くじびき、昨年度の入賞者はシードで二日目から。シンはぺーぺーなので一日目から。初日は試合数が多く、結構疲れる。体力的にはハンデ。
 二戦目でヒナホホとあたる。えええまじで。まじで。入賞でも結構いい金出るからな、お前は全然見つからなかったから、滞在費かせぎがわりに。すまん。まあ文句は後で。
 会話しながら戦う。ヴァレフォールの腕輪、もどったのか。ああ、色々あってね。準備はできてるぞ。そうか。トーナメントが終わったら、なんとかして死者の門までこい。そこから迷宮まで一気にかける。ああ。あと、ごめん、もしかしたら一人、連れが増えるかも?ヒナ、瞠目し、男?女?男。こども、そうか。マスルールって名前なんだけどな。すげーつよいの。で、だれかさんとおなじ、死んだ目してるんだ。…。
 ヒナ、複雑そうに。だからしん、言う。もう妹の代わりとかじゃない、俺が助けたいから助ける。まあ、リーダーはお前さんだ。きちんと責任取るぅて言うなら、俺は何も言わん。ありがと。
 本気で戦いたいんだけどなぁ、お前さんには優勝してもらわないといけないから、て。ヒナ、力抜く。いっきにせめこんで、かつ。お別れ。じゃまたあとで。
 やっぱヒナ、強い。シン、控室へ戻ろうとする途中、マスにあった。何かいいたそう。本気じゃなかっただろ。なんか会話してたし。シン、慌てて物影へ。聞こえたのか。こくり。そっか耳まで超人的なのか…。
 あんた、俺をつれてく、つもりなの。ああ。なんで? お前にひかれたから。つよいし。きっと一緒に旅をしたらたのしい。それに、お前によくにた奴をしってるんだ。きっとなかよくなれるよ。弟になってやってくれよ。
 マス、やっぱふいっていなくなっちゃう。でも、光が揺れてたから、こっちもあきらめない。シン、伸びをして部屋に戻った。
 
 順調に勝ち進む。途中、不思議な技を使う挑戦者と当たって負けそうになったけど、何とか乗り切った。
 この町にきて初日にぶつかった女とにたふんいき、同じような服。武器はなく徒手空拳、でも触れられると力が奪われる。
 その男は負けたというのに晴れやかに笑って、やっぱり君は不思議な力を持ってるね。今は上手く巡ってるけど、新しい要素がは言ったら入ったら乱れるかも。その時は訪ねてくるといい、て言い残し、去る。
 で、準決勝。マスルールとあたる。だいぶへろへろ。休んでいると、領主がはいってくる。お前、シンドバッドだろ。迷宮攻略者の。そう。もっとはやくにいってくれればよかったのに。そしたら別の使い道があったのに。ふーん。
 シン、にやりとする。なあ、賭けをしないか? シン、耳からピアスとって。これ、ジンの金属器。俺、次が負けたらこれを提供するし、真面目に借金返すまでここではたらく。けど、もし俺が優勝したら。マスルールをくれ。
 領主、驚く。そして笑う。正義の味方気どりか!悪いか?ちょうどあれくらいの弟がいてね。まあいいだろう。どうせお前にはかてやしない。書類書いてくれよ。上機嫌でいいよって。
 領主、周りの者にも言葉を掛けてでてゆく。さあ決勝の時間。重い腰を上げ、出ようとし、見張りの横を通ったところで、「悪いな」て声がして、脇腹に灼熱。
「…!」
シン、離れる。男、冷たい目で。
「お前、望み過ぎだよ。心配するな、死にはしない程度の深さだ。それなりに戦って、負けてこい。後で治療してやる」
「っ…!」
外へ出させる。マス、怪我に気付いたのか何かいいたげ。でも、負ける訳にはいかない。
 シン、戦う。でも、傷がふり。どうしてもかばってしまう。じんわりと広がる朱。客席ざわざわしてる。マス、ついに困ったように手を止める。その怪我。気にすんな。再開。
 強がるけど、内心冷や汗だらだら。やべーいたい。結構血も出てる。でも、シン、あえてわらう。意地も通せば現実になる。ここで諦めたら全てがおしまいだ。マスの教官が怒鳴る。やれ!客も起こる。本気を出せ!かぶりをふる。剣をぶつける。熱気最高潮。ぞくぞくする。痛いけどあんまり感じない。勃起しそう。
「シン!!」
ジャーファルノ声が聞こえた気がした。前から三列目くらいに、大人に押し潰されそうになりながらいる。一人。ああ、無様な格好はみせらんないなぁって、シン、力を出す。
「お前、いっしょにこい!」
「いけねーよ!」
 マスの剣をはじきとばす。こっちの殺気に、向こうも本気になったのがわかった。シン、睨み据える。どっちが強いか。そして、シン、力でねじ伏せた。マス、降参のあいず。
「勝者、シンドバッド!」
歓声に応える。やべー目霞む。けど、シン、立ち上がる。マスを引き起こし、言う。
「実は領主と賭けをした。お前はおれのもんだ。だから選択肢ない、一緒にこい」
競技場を一周。気品のありがたい言葉を賜り、中に引っ込んだ途端、シン、囲まれる。けど、次の瞬間、バアルを発動。マスを攫って逃げる。一路、死者の門へ。
準備できてた。馬に乗って失踪。ジャが煙を焚く。拡散。
「シン、怪我?! っていうか、その子」「ごめん、あとたのむわ…」
追手を巻きながら、一路迷宮へ。
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